2-11 コストの見積り
概要
各プロジェクトの活動の完了及びプロジェクト全体の完了に必要なコストを見積もる。初期の段階で高い精度のコスト見積りが難しい場合は,初期にはコストの概算見積りを迅速に行う簡易な手法を用い,プロジェクトの進捗に伴い段階的に,より精度の高い見積り手法に変更するなどの対応が必要である。
活動別に,必要なメンバーと資源量や資源単価などを基にコストを積算し,プロジェクト推進に付帯して必要なコスト,リスクに備えた予備費又は引当金などを特定して,プロジェクト全体の完了に必要な総コストを得る。コストの見積りの精度が低い場合には,そのことを考慮して予備費を確保するとともに,あらかじめ予備費の使用に関する手順を定めておく。総コストは,プロジェクトの立ち上げ時に与えられた経済面の制約,組織の予算の作成の方針を勘案して検証する。
- 引用
- 情報処理推進機構 「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス- 情報処理技術者試験における知識・技能の細目 Ver.7.1(2023年12月25日掲載)
- https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nq6ept00000014gb-att/syllabus_pm_ver7_1.pdf
プロジェクトの見積り方法
要素 | 説明 |
---|---|
専門家の判断に基づく見積もり | 専門家や経験豊富なチームメンバーが、彼らの知識や経験に基づいて作業量や時間を見積もります。これは、特にプロジェクトの初期段階や十分なデータがない場合に使用されます。 |
類推見積もり | 類似の過去のプロジェクトや業務のデータを使用して、作業量や時間を推定します。これは、過去の類似プロジェクトの結果を参考にする方法です。 |
生産性基準値に基づく見積もり | 過去のデータから導き出された生産性基準値を使用して、作業量や時間を見積もります。 |
3点推定法 | 3点推定法では、最適なシナリオ、最悪のシナリオ、および最もありそうなシナリオに基づいて、作業量や時間を見積もります。これにより、不確実性を考慮した見積もりが可能になります。 |
機能ポイント解析 | ソフトウェア開発プロジェクトの場合、ソフトウェアの機能ポイント数を評価し、それに基づいて作業量や時間を見積もります。 |
パラメトリック見積もり | パラメータや特性に基づいて数学的モデルを使用して、作業量や時間を見積もります。これには、ソフトウェア開発などのプロジェクトにおいて広く使用されているCOCOMO(Constructive Cost Model)などがあります。 |
これらの方法はそれぞれ異なる利点や制約があります。プロジェクトの性質や要件、可用なデータ、チームの経験レベルなどに応じて、適切な見積もり方法を選択することが重要です。
生産性基準値に基づく見積もりについて
- プロジェクトや業務の作業量や時間を見積もる際に利用される手法の1つです。この手法では、過去の経験やデータを元に、特定の作業やタスクを完了するのに必要な時間やリソースを予測します。
生産性基準値は、特定の作業やタスクを完了するために通常必要な時間やリソースの平均値や標準値を表します。これは過去の類似のプロジェクトや業務の実績から導き出されることがあります。例えば、特定のプログラミング言語でのコードのライン数や機能追加にかかる時間などが生産性基準値として利用されます。
生産性基準値を使用した見積もりの手順は次のようなものです:
- 作業項目の識別: プロジェクトや業務に含まれる作業やタスクを識別します。
- 過去のデータの収集: 過去の類似のプロジェクトや業務のデータを収集し、作業量や時間などの情報を取得します。
- 生産性基準値の適用: 収集したデータから、各作業やタスクの生産性基準値を特定します。これにより、特定の作業やタスクを完了するのに通常必要な時間やリソースを推定します。
- 見積もりの作成: 各作業やタスクに対して、生産性基準値を適用して見積もりを作成します。これにより、プロジェクト全体の作業量や時間を見積もることが可能になります。
生産性基準値を使用した見積もりは、過去の経験やデータに基づいているため、比較的信頼性が高く、見積もりの精度を向上させることができます。ただし、特定のプロジェクトや業務の状況や要件によっては、個別の調整や修正が必要な場合もあります。