2-16 調達の計画
概要
調達を開始する前に,調達の戦略及びプロセス全体を適切に策定し,調達計画を作成する。
組織として,コアとなる事業領域とそれ以外の事業領域を区別する戦略を採るような場合は,調達の計画に関しても事業領域の区分けに従って調達対象や契約形態を設定する必要がある。
作業効率,対応可能なメンバー,予算などを考慮し,システム開発メンバー,製品,サービスに関して供給者から調達する場合の意思決定が合理的に行えるように,調達のマネジメントの方法を規定し,調達仕様書及び要求事項を作成する。
- 引用
- 情報処理推進機構 「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス- 情報処理技術者試験における知識・技能の細目 Ver.7.1(2023年12月25日掲載)
- https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nq6ept00000014gb-att/syllabus_pm_ver7_1.pdf
プロジェクトの調達計画について
プロジェクトの調達計画とは、プロジェクト遂行に必要なハードウェア、ソフトウェア、サービスなどをいつ、どのように調達するかを詳細に計画することです。
調達計画の目的
- 必要な資源の確保: プロジェクトの成功に必要な全ての資源を確実に調達します。
- コスト管理: 予算内で最適な資源を調達し、コストオーバーランを防ぎます。
- スケジュール管理: プロジェクトスケジュールに沿って、必要な資源を適切なタイミングで調達します。
- リスク管理: サプライヤーの選定ミスや納期遅延など、調達に関するリスクを最小化します。
- 品質管理: 調達する資源がプロジェクトの品質要求を満たしていることを確認します。
調達計画の作成手順
- 調達品目の特定: プロジェクトに必要な全ての品目(ハードウェア、ソフトウェア、サービスなど)をリストアップします。
- サプライヤーの選定: 各品目に対して、複数のサプライヤーを検討し、評価基準に基づいて最適なサプライヤーを選択します。
- 契約条件の決定: 各サプライヤーとの契約条件(価格、納期、支払い条件、保証条件など)を決定します。
- 調達スケジュール作成: 各品目の調達スケジュールを作成し、プロジェクト全体のスケジュールと整合性を確認します。
- リスク評価: 調達プロセスで発生する可能性のあるリスクを洗い出し、リスク対策を検討します。
調達計画書に含めるべき項目
- プロジェクト概要: プロジェクトの目的、範囲、スケジュールなど
- 調達品目一覧: 品名、数量、仕様、納期など
- サプライヤー情報: サプライヤー名、連絡先、評価結果など
- 契約条件: 価格、支払い条件、保証条件、納期など
- 調達スケジュール: 各品目の調達スケジュール
- リスク評価: 発生可能性のあるリスクと対策
調達計画作成のポイント
- 早期の計画: プロジェクトの初期段階から調達計画を作成し、プロジェクト全体の計画に組み込むことが重要です。
- 詳細な計画: 各品目について、可能な限り詳細な情報を盛り込むことで、計画の精度を高めることができます。
- 柔軟性: プロジェクトの状況変化に対応できるよう、柔軟な計画を作成することが重要です。
- 関係者との連携: 調達に関わる全ての関係者(プロジェクトマネージャー、購買担当者、技術担当者など)と密に連携を取ることが重要です。
調達計画の重要性
調達計画は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。適切な調達計画を作成することで、プロジェクトのコスト削減、スケジュール遅延の防止、品質の向上に貢献できます。
要員確保に必要な契約
プロジェクトにおけるメンバーの調達に関して、契約の種類にはいくつかの選択肢があります。主に以下のような契約形態が一般的です。
1. 正社員契約
- 説明: 正社員として雇用される契約です。プロジェクトの一部として継続的に業務を行うメンバーを調達する場合に用いられます。
- メリット: 長期的な関係を築きやすく、企業文化やプロジェクトに深く関与することができます。
- デメリット: 雇用コストが高く、プロジェクト終了後の人員管理が必要です。
2. 契約社員契約
- 説明: 特定のプロジェクトや期間に限定して雇用される契約です。契約期間終了後、契約が終了します。
- メリット: プロジェクトの期間に応じた柔軟な雇用が可能です。
- デメリット: 長期的な雇用保証がないため、専門知識のある人材を確保するのが難しい場合があります。
3. 派遣契約
- 説明: 人材派遣会社から派遣される契約形態です。派遣社員は派遣元の企業に所属し、派遣先で働きます。
- メリット: 必要なスキルを持った人材を迅速に調達でき、契約期間の柔軟性があります。
- デメリット: 派遣社員は派遣元の企業に所属しているため、プロジェクトに対するコミットメントが低い場合があります。
4. 業務委託契約
- 説明: 個人または法人に対して特定の業務や成果物を依頼する契約です。委託先は成果物に対して責任を負います。
- メリット: 専門的な業務をアウトソースすることで、プロジェクトの柔軟性が高まります。
- デメリット: 業務委託者の管理が難しく、成果物の品質にばらつきが生じる場合があります。
5. フリーランス契約
- 説明: フリーランスの個人と契約して、特定のタスクやプロジェクトを依頼する契約です。
- メリット: 高度な専門知識を持った人材を必要に応じて柔軟に利用できます。
- デメリット: フリーランスは他のクライアントを持っている可能性があり、コミットメントやスケジュールの調整が難しい場合があります。
6. 請負契約
- 説明: 依頼者が請負業者に対して特定の業務を依頼し、成果物に対して報酬を支払う契約です。請負業者は成果物の完成に責任を持ちます。
- メリット: プロジェクトの特定の部分を外部に任せることで、リスクを分散できます。
- デメリット: 請負業者の進捗や品質の管理が難しくなる場合があります。
これらの契約形態の中から、プロジェクトの特性や目的に最も適したものを選ぶことが重要です。
ハードウェア・ソフトウェアに必要な契約
プロジェクトにおけるハードウェアやソフトウェアの調達に関しても、いくつかの契約形態があります。以下に主要な契約形態を紹介します。
1. 購入契約
- 説明: ハードウェアやソフトウェアを一括して購入する契約です。購入後、その資産は企業の所有物となります。
- メリット: 資産として長期的に利用可能であり、カスタマイズの自由度が高いです。
- デメリット: 初期費用が高く、購入後の保守やアップグレードにコストがかかる場合があります。
2. リース契約
- 説明: ハードウェアやソフトウェアを一定期間リース(賃貸)する契約です。契約期間終了後、リース物品は返却するか、購入オプションを行使するか選択します。
- メリット: 初期費用が抑えられ、最新の技術を短期的に利用できるため、資金繰りがしやすくなります。
- デメリット: 長期間にわたると、購入よりも総コストが高くなる場合があり、資産として所有できないため、自由なカスタマイズが制限されることがあります。
3. サブスクリプション契約
- 説明: ソフトウェアを月額または年額で利用する契約です。クラウドベースのソフトウェアで一般的な形態です。
- メリット: 常に最新のバージョンを利用でき、初期費用が低く抑えられるため、コスト管理がしやすいです。
- デメリット: 継続的な支払いが必要であり、長期間利用する場合、総コストが高くなる可能性があります。また、契約終了時にはソフトウェアの利用ができなくなります。
4. ライセンス契約
- 説明: ソフトウェアの利用権を購入する契約です。一般的に、ユーザーごとのライセンスやサイトライセンスなどの形式があります。
- メリット: 一度購入すれば、そのバージョンは永続的に利用可能であり、カスタマイズの自由度もあります。
- デメリット: バージョンアップや保守契約が別途必要になる場合があり、初期費用が高くなることがあります。
5. 保守・サポート契約
- 説明: 購入またはリースしたハードウェアやソフトウェアに対して、定期的なメンテナンスやサポートを提供する契約です。
- メリット: ハードウェアやソフトウェアの安定した運用が保証され、障害発生時に迅速な対応が可能です。
- デメリット: 継続的な費用が発生するため、コストがかさむことがあります。
6. アウトソーシング契約
- 説明: ハードウェアやソフトウェアの管理や運用を外部業者に委託する契約です。データセンターやクラウドサービスの利用も含まれます。
- メリット: 専門的なスキルを持つ業者に管理を委ねることで、内部リソースを節約できます。また、最新技術の活用が容易です。
- デメリット: 業者に依存するため、サービスの品質やセキュリティリスクが発生する可能性があります。
7. 共同購入契約
- 説明: 他の企業や団体と共同でハードウェアやソフトウェアを購入する契約です。大規模な調達に適しています。
- メリット: コストの分担により、個別に購入するよりも費用が抑えられる場合があります。
- デメリット: 他の購入者との合意が必要であり、導入時期や使用条件の調整が必要となることがあります。
プロジェクトの要件や予算に応じて、最適な契約形態を選ぶことが重要です。