4-2 変更の管理
概要
プロジェクト及び成果物に加えられる変更を管理し,変更を実施する前に,これらの変更要求の受入れ又は棄却を決定する。プロジェクトの環境の急激な変化や不確かさの度合いの強さに起因する変更は前向きに捉えて,チームが変更に確実にかつ迅速に対応できるように,また変更の実施によってより高い価値を創出できるように管理する。申請された変更要求に関して内容を確認し,それを変更登録簿に記録する。
変更要求には,変更の概要,変更要求の理由,変更が与え得る影響や変更を実施しない場合の影響の査定などを含む。変更は,あらかじめ定められた変更管理手順に従ってステークホルダと協議の上,変更することに伴う機会と脅威の影響,変更の範囲,時間,コスト,品質,リスクを分析・評価し,影響の査定結果についてステークホルダの承認を得る。また,承認された変更に関連するプロジェクト計画を更新する。さらに,必要なプロジェクト文書の更新を含めて,変更の実施のために全てのステークホルダにその決定を通知する。必要に応じてコストや作業期間の簡易な見積り方法を活用して,変更が生じた際の迅速なステークホルダの意思決定を促す。
変更要求が承認されると,プロジェクトマネジメント業務を担うメンバーは,変更に関わる全てのプロジェクトチームのメンバーに対して変更の実施を指示し,変更の実施の状況を確認し,その結果を評価する。
また,成果物への変更は,構成管理の手順によって適切に管理する。
- 引用元
- 情報処理推進機構 「プロジェクトマネージャ試験(レベル4)シラバス- 情報処理技術者試験における知識・技能の細目 Ver.7.1(2023年12月25日掲載)
- https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/nq6ept00000014gb-att/syllabus_pm_ver7_1.pdf
200字要約
プロジェクトの変更管理では、変更要求を受け入れるか棄却するかを判断し、変更による価値向上を目指します。変更内容や影響を分析し、ステークホルダーの承認を得た上で計画や文書を更新し、全関係者に通知します。迅速な意思決定のため簡易見積りも活用します。承認後はチームに変更を指示し、実施状況を確認・評価します。成果物への変更は構成管理手順で適切に管理し、変更が確実にプロジェクトに反映されるようにします。
プロジェクト管理における変更管理について、以下のように説明します。
変更管理について
1. 変更要求の管理と決定
- 変更要求の受付と記録
プロジェクトや成果物に対して提案される変更要求を受け付け、その内容を確認した上で変更登録簿に記録します。記録には、以下の情報が含まれます:- 変更の概要
- 変更要求の理由
- 変更がプロジェクトに与える影響
- 変更を実施しない場合のリスク
- 変更要求の評価と決定
変更管理手順に従い、ステークホルダーと協議を行い、変更に伴う影響(範囲、コスト、時間、品質、リスクなど)を分析・評価します。その結果を基に、変更要求を受け入れるか棄却するかを決定し、ステークホルダーの承認を得ます。
2. 変更の価値と前向きな対応
-
環境変化への柔軟な対応
プロジェクト環境が急速に変化する場合や、不確実性が高い状況では、変更を前向きに捉えます。これにより、変更を迅速かつ確実に実施できるチーム体制を整え、高い価値の創出を目指します。 -
迅速な意思決定の促進
必要に応じて、コストや作業期間に関する簡易な見積り手法を活用し、ステークホルダーの意思決定を迅速化します。
3. 変更の実施と通知
-
変更の計画と通知
承認された変更に関連するプロジェクト計画を更新し、変更に必要なプロジェクト文書の改訂を行います。この計画と改訂内容は、全てのステークホルダーに通知され、変更実施の準備を整えます。 -
変更の指示と評価
プロジェクトマネジメント業務を担当するメンバーは、変更に関わる全てのプロジェクトメンバーに変更の実施を指示します。また、変更の進捗状況を確認し、実施結果を評価します。
4. 構成管理による成果物の変更管理
- 構成管理の適用
成果物への変更については、構成管理手順に従い適切に管理を行います。これにより、変更履歴の追跡やバージョン管理が確実に行われ、プロジェクトの整合性を維持します。
まとめ
変更管理は、プロジェクトの成功において重要なプロセスです。プロジェクトの変更に伴う影響を適切に評価し、迅速かつ効果的に対応することで、プロジェクトの価値を最大化します。また、全ての変更はステークホルダーの協力と透明性を確保しながら進めることで、プロジェクト全体の信頼性を高めることができます。
プロジェクト管理における変更管理について
変更管理の重要性と目的
プロジェクトは、一度計画を立てても、様々な要因によって変更が生じるのが一般的です。この変更を適切に管理することは、プロジェクトの成功にとって極めて重要です。
変更管理の目的
- プロジェクトの安定化: 変更による混乱を最小限に抑え、プロジェクトを安定させる。
- リスクの低減: 変更がもたらす潜在的なリスクを事前に特定し、対策を講じる。
- 品質の維持: 変更がプロジェクトの品質に与える影響を評価し、品質を維持する。
- コストとスケジュールの管理: 変更によるコストやスケジュールへの影響を評価し、適切に管理する。
- 意思決定の透明化: 変更に関する意思決定プロセスを明確にし、ステークホルダー間の合意を形成する。
変更管理のプロセス
- 変更要求の提出: プロジェクトに関わるメンバーから、変更要求が提出されます。
- 変更要求の評価: 提出された変更要求の内容を詳細に検討し、その必要性や影響を評価します。
- 変更の承認: 評価の結果に基づき、変更の可否を決定します。
- 変更の実施: 承認された変更を、プロジェクト計画に反映し、実行します。
- 変更の検証: 変更が正しく実施されたか、意図した結果が得られたかを検証します。
変更管理における重要な要素
- 変更登録簿: すべての変更要求を記録し、追跡するためのデータベースです。
- 変更管理手順: 変更要求の提出から承認、実施、検証までのプロセスを詳細に定めた手順書です。
- ステークホルダー: プロジェクトに影響を受けるすべての関係者(顧客、開発チーム、経営層など)です。
- 構成管理: プロジェクトの成果物を管理し、変更による影響を最小限に抑えるための活動です。
変更管理のポイント
- 早期発見: 変更の必要性が発生したら、できるだけ早く発見し、対応することが重要です。
- 影響分析: 変更がプロジェクト全体に与える影響を、事前にしっかりと分析する必要があります。
- コミュニケーション: 変更に関する情報を、関係者全員に共有し、透明性を確保することが重要です。
- 柔軟性: プロジェクトの状況は常に変化するため、変更管理プロセスも柔軟に対応できる必要があります。
変更が発生する原因
プロジェクト中に変更が発生する主な原因には以下のものがあります。
- 顧客要求の変更: 顧客のニーズや期待が変わることにより、プロジェクトの仕様やスコープが変更されることがあります。
- 技術的な問題: 新しい技術の導入や技術的な問題の解決が必要になる場合に、プロジェクト計画に変更が生じます。
- 外部環境の変化: 法規制の変更や市場環境の変動など、外部要因によりプロジェクトの進行に影響が出ることがあります。
- リスクの発生: 予期せぬリスクが顕在化し、その対策として計画の変更が必要になることがあります。
- 資源の変動: 人員の変更や資材の不足など、利用可能なリソースが変わることで計画を見直す必要があります。
変更管理手順を決める
変更管理手順は、変更を適切に管理し、プロジェクトの成功を確保するために重要です。以下のステップが一般的です。
- 変更提案の受付: 変更の必要が生じた際に、関係者から正式な変更提案を受け付けます。提案書には、変更の理由、具体的な内容、影響範囲、必要なリソースなどが記載されます。
- 変更の評価: 提案された変更を評価し、その影響を分析します。評価には、コスト、スケジュール、品質、リスクなどが含まれます。
- 承認プロセス: 評価結果を基に、変更の可否を決定します。このプロセスには、プロジェクトマネージャー、ステークホルダー、変更管理委員会などの承認が必要です。
- 計画の更新: 承認された変更について、プロジェクト計画を更新します。これには、スケジュール、予算、リソース配分などの修正が含まれます。
- コミュニケーション: 変更内容とその影響をプロジェクトチームやステークホルダーに通知し、必要な対応を指示します。
変更の実施
変更が承認された後の実施ステップは以下の通りです。
- 実施計画の策定: 変更を効果的に実施するための詳細な計画を立てます。これには、タスクの割り当て、タイムラインの設定、必要なリソースの調整が含まれます。
- 実施: 変更作業を計画に従って実行します。これには、技術的な修正や新しいプロセスの導入が含まれます。
- 監視と制御: 変更の進行状況を監視し、計画通りに進んでいるかを確認します。問題が発生した場合には、適切な対応を行います。
- 評価とフィードバック: 変更が完了した後、その結果を評価し、プロジェクト全体に対する影響を分析します。フィードバックを基に、今後のプロジェクト管理に活かします。
このように、変更管理はプロジェクトの成功に不可欠なプロセスであり、適切な手順を踏むことで、変更によるリスクを最小限に抑えつつ、プロジェクト目標を達成することが可能です。