1. システム監査の計画(2/3)~年度計画の策定~

システム監査技術者

1-2 年度計画の策定

概要

中長期計画を受けて,年度単位に年度計画を策定する。年度計画の策定に際しては,年度の経営計画及び情報システム計画に対応させてシステム監査部門の年度目標を明確にする。年度計画には,当年度の監査方針,監査目的,監査対象,重点監査テーマ,実施体制,リスク評価の結果,実施スケジュール,システム監査技術者の採用・育成計画,予算をはじめ,自組織体の監査基準の策定・見直しを盛り込む。

システム監査の年度計画について

システム監査の年度計画は、当年度の監査活動を効果的かつ効率的に実施するための指針を示す文書です。監査方針、目的、対象、重点テーマ、実施体制、リスク評価の結果、実施スケジュール、予算を具体的に記載します。また、システム監査技術者の採用・育成計画や、監査基準の策定・見直しも盛り込みます。この計画により、組織のリスクを適切に評価・管理し、情報システムの信頼性や安全性を高めるための行動指針を提供します。

システム監査における年度計画の役割と必要性

役割

  1. 全体的な指針の提供
    • 監査活動の目的や方針を明確にし、組織のリスク管理や目標達成を支援します。
    • 監査対象や重点テーマを明確化することで、活動の効率性と効果性を向上させます。
  2. リソースの最適化
    • 人員や予算などのリソースを効果的に配分し、無駄のない監査活動を実現します。
    • 実施スケジュールを計画することで、適切なタイミングで必要な監査を行います。
  3. 透明性と説明責任の確保
    • 計画に基づき、監査の目的や活動内容をステークホルダーに説明しやすくします。
    • 実施状況を振り返る際の評価基準としても機能します。

必要性

  1. リスクの増大と多様化への対応
    • ITシステムやサイバーセキュリティに関するリスクが増大する中、計画的な監査で早期発見と対応を可能にします。
  2. 組織の目標達成支援
    • 監査活動を通じて、システムの信頼性や効率性を向上させ、経営目標の達成に貢献します。
  3. 法令遵守と基準適合性の確保
    • 計画を通じて法規制や業界標準への準拠状況を確認し、コンプライアンスリスクを軽減します。
  4. 継続的改善の促進
    • 年度計画は、過去の監査結果や組織の変化を踏まえた改善策を反映し、監査活動の成熟度を向上させます。
      年度計画は、システム監査の効果を最大化し、組織全体のリスク管理と価値向上を支える重要な役割を果たします。

年度計画書の記載項目

年度計画書に記載すべき項目について、以下の観点で説明します。この計画書は、監査活動の効果的な実施と成果の最大化を目的としています。

No 要素 説明
1 当年度の監査方針 監査の全体的な方向性や重点的に取り組むべき領域を定めます。組織の経営方針や目標に合わせ、監査活動が組織全体の価値向上に寄与することを示します。
2 監査目的 当該年度の監査活動の具体的な目的を明示します。
例:内部統制の適切性評価、法令遵守の確認、情報セキュリティリスクの管理状況評価など。
3 監査対象 監査を実施する具体的な対象を定めます。
例:部門、システム、プロジェクト、業務プロセスなど。
4 重点監査テーマ 監査対象の中でも特にリソースを集中する領域を明記します。
例:新たに導入された情報システムの運用状況、リスクの高い業務プロセス、サイバーセキュリティ対策など
5 実施体制 監査を実施する組織やチームの構成を記載します。必要な役割や担当者、外部専門家の活用についても触れます。
6 リスク評価の結果 監査計画の基盤となるリスク評価の概要を示します。リスク評価に基づき、監査対象や重点テーマを選定した理由を説明します。
7 実施スケジュール 監査活動の具体的なタイムラインを示します。各監査対象やテーマごとの開始日、終了日、報告期限などを明記します。
8 システム監査技術者の採用・育成計画 専門技術者の確保とスキル向上のための施策を記載します。新規採用計画、内部研修、資格取得支援などを盛り込みます。
9 予算 監査活動に必要な資金を計画します。人件費、外部コンサルタント費用、研修費、ツール導入費用などを含めます。
10 監査基準の策定・見直し 監査の評価基準や手法について、最新の状況やリスクに合わせた変更点を反映します。監査基準が実際の監査活動に適用される際のガイドラインも含めます。

まとめ
これらの項目は、年度計画が具体的かつ実効性のあるものになるよう設計されています。それぞれの項目が互いに関連し合い、組織全体のリスク管理や価値向上に資する内容となることが重要です。